日帰り旅行 思い出の「おじいちゃんの丹青碗」 鶯歌尖山埔の製陶歴史を振り返る

神話にも登場する鶯歌は、長い陶芸の歴史がある。製陶業の栄えた時代がすでに過ぎ去った今、老舗の製陶所にとって、どう突破口を開くのかが最も重要な課題となっている。そこで、「新旺集瓷」の4代目経営者は伝統文化と新たな理念を結び付け、方向転換を試みた。

思い出の「おじいちゃんの丹青碗」 鶯歌尖山埔の製陶歴史を振り返る

不思議な伝説を持つ鶯歌は、古くから製陶所が集中している場所でもある。この小さな町ならではのお土産を通して、その地域活性化の成功までの道のりを覗いてみよう。

昔、ここには「鶯歌」という名の鳥の化け物がいた。その化け物は鄭成功が率いた軍隊にやっつけられ、死体が巨石になったが、その巨石が今の「鶯歌石」だという。

この神話には番外編がある。鄭成功が率いた兵士たちは草履を履いていたが、途中で草履の底についた泥を叩き落したら、その落ちた泥が積もり、今の「尖山堆」になったという。鄭成功が大砲で鳥の化け物「鶯歌」をやっつける際、確実に撃ち落とすため、わざわざ重い鉄の大砲をこの「尖山堆」の頂上に引いて上がったと言われる。

「鶯歌石」がこの町の東北に位置しているのに対し、「尖山堆」は南西に位置する。つまり、神話の中で大砲が描いた軌跡の中央あたりが、ちょうど今日の「鶯歌陶瓷老街」だ。地元の人にとっては、あの化け物の石よりも、靴底の泥でできたという「尖山堆」のほうが、この土地の象徴的な存在なのかもしれない。高層ビルがまだ少なかった頃は、顔を上げれば、この丸い丘が見えたらしい。

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この町には「尖山」に因んで名付けられた道が2つある。1つは尖山から大漢渓まで延びている長い「尖山路」で、そこにある「蘇家手工豆皮(手作り湯葉)」(永順湯葉工場)は、地元の人々に70年以上愛されているという。(関連記事:早朝から湯気が立つ「永順湯葉工場」 鶯歌にある美味しさ

もう1つは、尖山の近くにある丘陵に位置する「尖山埔路」だ。焼き物にふさわしい黒土は尖山に、赤土は永昌にあるため、かつて製陶業者はこの緩やかな坂に沿って窯場を設置し、陶磁器を作っていた。ここで作られた「尖山焼」は、日本統治時代から広く知られている。この窯場の集まる「尖山埔」があってこそ、今日の「鶯歌陶瓷老街」があるのだ。

「東鶯故事小徑」を通って「三鶯芸術村」へ

鶯歌製陶史のページをめくる

「新旺集瓷(The Shu's Pottery)」の4代目経営者である許世鋼さんも、母方の祖母が尖山のふもとに住んでいたことから、子供の頃は、当時野原だった尖山埔でよく遊んでいたそうだ。彼の曾祖父の許銀喜さんがこの尖山埔で製瓦事業を立ち上げたのは、1926年だった。

その後、許家の2代目である許新旺さんが「丹青碗」をはじめ、「水青碗」や「陰陽碗」など、日用品としての陶磁器の大量生産を開始した。3代目の許杊杰さんの時代は、台湾の高度経済成長期で、彼は「灯塔牌」と「金鋼牌」という2つのタイルのブランドを作り上げた。「金鋼」というブランド名は、「鋼の如く頑丈になるように」という期待がこもっているという。4代目の許世鋼さんの名前も、このブランドの精神に由来している。

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瓦や日用品としての陶磁器の製造から、建築や工業用陶器の製造へと方向転換するのが、鶯歌にある老舗陶磁器製造所の多くが辿った典型的な道だが、方向転換には困難と挑戦が付き物だ。陶磁器業界で「燒十窯破九窯(10回焼いて9回は失敗する)」ということわざがあるように、陶磁器の製造はまるでギャンブルのように、スキルと運の両方が必要なのだ。

1965年、タイルの製造に方向転換しようとした許家は、窯場で19回連続の失敗に見舞われた。そこで、許世鋼さんの祖母は自分の嫁入り道具の宝飾品を10万元で質屋に売り、そのお金で北投のある人から『釉料祕笈(釉薬の秘伝書)』という本を譲ってもらった。それと同時に、専門家を鶯歌の工場まで招き、現場で指導してもらったことで、「19回連続の失敗」という災難から逃れ、方向転換に成功したという。今でも、「新旺集瓷」の2階にある「許新旺陶瓷記念博物館」には、いわゆる「一紙千金」の秘伝書が展示されている。

北投で入手した「一紙千金」の『釉料祕笈』

1980年代、鶯歌の陶磁器製造所の多くはドイツやイタリアの窯を使っていた。外国人技師が海を渡り、台湾までやってきて、現場で指導をするという例は少なくなかった。許世鋼さんも、小さい頃はしばしば外国人技師が家を訪ね、窯の煙道を変えるため地面を掘ったり、水平を測ったりするのを見たという。家で食事を共にする時、その外国人技師はギターを弾きながら歌ったりして、許世鋼さん一家と楽しい時間を過ごしていた。(関連記事:鶯歌の路地にある日本統治時代の製陶所)

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「許新旺陶瓷記念博物館」の一角

産地には宝物が

家業を継いだ許世鋼さんは、再び方向転換を図った。「新旺集瓷」はただの陶磁器製造所としてだけでなく、まとめ役として、地域の文化資源の整合に取り組んでいる。「微力ながら、地元の業者が『共享(分かち合い)、共生、共好(共に成長する)』できるように力を捧げたいです」と語る。

2010年に、許世鋼さんは祖父の時代の旧工場を「新旺集瓷」という観光工場に改装した。自社や若手陶芸家の作品を展示・販売しているほか、職人による本格的な陶芸教室も開いている。新北市政府により第一回「優良観光工場」として認定された。

2016年から「鶯歌文化祭」(2018年、「鶯歌陶日子」に名称変更)を開催している許世鋼さんは、その理由について、「自分は小学生時代、陶土のひとかけらも触ったことがなかったから」と話した。文化祭開催時に「新旺集瓷」は学校へ赴き陶芸体験活動を実施したり、また、地元の学校に陶芸教室開設の支援も行っている。(関連記事:変わった形をしているけど? 陶磁器の新しい可能性を考える新旺集瓷

「新旺集瓷」の4代目経営者・許世鋼さんとその妻・呉佳樺さん

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毎朝、開店時間になったら、たくさんのかわいい赤ちゃんが親に抱っこされて「新旺集瓷」に集まってくる。赤ちゃんの手形や足形を、ハリウッドスターのように陶板にとるのだ。その後も、ろくろの体験や講座の参加にと、陶芸教室には一日中多くの人がやってくる。

展示エリアには「新旺集瓷」の復刻版「丹青碗」が見られる。これは、許世鋼さんがよく手土産として友人に贈るものだ。「丹青碗」はかつて台湾の家庭でよく目にした食器だが、特に許家の「丹青碗」は、竹、屏風、鶴、ライチなどの浮彫で有名だった。中でも「子孫繁栄」を象徴するライチの絵柄が許家独自のもので、極めて珍しいという。(関連記事:3代続く立晶窯 台湾の伝統を再現

復刻版の「丹青碗」

木製の台座と回転盤でできた「幸福同心鍋」は、台湾の「金点設計奨(ゴールデン・ピン・ デザイン・アワード)」を受賞した商品だ。鍋料理はもちろん、おかゆやスープなどの煮込み料理も、チョコレートフォンデュも作れる。みんなで楽しく食事するのに最適だ。

「幸福同心鍋」

「陶神」のご加護のあるお守り

知る人ぞ知る鶯歌の手土産を手に入れるには、鶯歌の福興宮へ「陶神(陶器の神様)」に会いに行かなければならない。「陶神」と称えられる羅明さんは、ろくろを操る陶工の始祖とされている。昔、尖山埔にある製陶所が毎年順番に「陶神」を自分の工場に迎え入れるというしきたりがあったが、今では福興宮で祀っている。

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お守りをもらう場合は、まず「土地公(氏神様)」の石像と「陶神」にご挨拶し、神様の同意を得るため「擲筊(2つの三日月型の赤い木片を地面に落とす)」をする。神様が同意したという意味の「聖筊(木片の平たい面の一方が上、もう一方が下に向く状態)」が出れば、自由にお賽銭を納め、「新旺集瓷」が神様の許可を得て、お線香の灰を入れて作った陶製のお守りがもらえる。(関連記事:尖山埔の陶磁器職人の心を支える鶯歌福興宮

陶製のお守り「有土斯有財(土地あれば富あり)」

鶯歌を訪ねる多くの人は、「茶碗や皿などの食器ばかり売っている」という表面的な印象しか残らないかもしれない。しかし、「新旺集瓷」に足を伸ばしてみたり、「鶯歌陶日子」のFacebookのページをチェックしてみたり、または年に一度の文化祭に参加し、地元の人に案内してもらって、歴史や文化に触れてみたりすると、また違う一面が見られるだろう。この「硘仔鎮(陶磁器の町)」の物語は、一言では語れないのだ。

文:包子逸 2019微笑季刊冬季号『礼好、台湾』より抜粋,中文原文網址

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新旺集瓷

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概要

1926年、初代目経営者が尖山埔包仔窯で製瓦所を創業。日本統治時代後期、2代目経営者・許新旺さんが協興窯業工場を創立し、茶碗をはじめ、タイルの取り扱いも始めた。「伝承」と「革新」の両方を重視する「新旺集瓷」は、「許新旺陶瓷記念博物館」を設立し、新鋭陶芸家の育成・技芸の継承・鶯歌文化の普及を目標とし、地域の発展に力を入れている。

おすすめの手土産:復刻版の「丹青碗」

2代目の許新旺さんが釉薬を調合し、日本統治時代から伝わってきた絵柄のある石膏型に鶯歌の尖山埔の陶土を入れ、成形する。その全盛期には、鶯歌の食器生産量の40%も占めていた。ただ、残念なことに、この「丹青碗」の釉薬の調合レシピは何の記録も残されておらず、今は記憶を頼りに様々な調合レシピを実験し、おじいちゃんの美しい思い出を復刻するしかないのだ。

新旺集瓷

住所:新北市鶯歌区尖山埔路81号 
電話番号:02-26789571
陶芸教室:新旺集瓷陶芸教室
Facebookページ:新旺・集瓷 The Shu's Pottery/ 集瓷 Cocera

鶯歌観光モデルコース

蘇家手工豆皮(永順湯葉工場):湯葉、鶏捲がおすすめ → 鶯歌陶瓷博物館を見学 → 鶯歌餅店:緑豆凸がおすすめ → 鶯歌福興宮:お守りを入手 → 大謙堂/一日小食:食事 → 安達窯 → 陶華灼ギャラリー → 新旺集瓷 → 立晶窯 → Teaday喝茶天:ティータイム

ゆっくりお茶を楽しめる「Teaday喝茶天」

おすすめスポット

蘇家手工豆皮(永順湯葉工場) 
住所:新北市鶯歌区尖山路208-1号 
電話番号:02-26703208
Facebookページ:永順豆皮

鶯歌陶瓷博物館 
住所:新北市鶯歌区文化路200号 
電話番号:02-86772727
Facebookページ:鶯歌陶瓷博物館

鶯歌餅店 
住所:新北市鶯歌区国慶街169-1号 
電話番号:02-26791289

鶯歌福興宮 
住所:新北市鶯歌区中正二路63号 
電話番号:02-26705580

大謙堂/一日小食 
住所:新北市鶯歌区尖山埔路14-1号2F
電話番号:0958080143
Facebookページ:一日小食

新益源陶器DIY工場
住所:新北市鶯歌区尖山埔路55巷13号 
電話番号:02-26792178
Facebookページ:新益源陶器DIY

安達窯(旗艦店)
住所:新北市鶯歌区尖山埔路54号 
電話番号:02-26789301
ホームページ:安達窯

陶華灼ギャラリー 
住所:新北市鶯歌区尖山埔路45号 
電話番号:02-26789698
Facebookページ:陶華灼藝廊 THZ Gallery

立晶窯 
住所:新北市鶯歌区重慶街64号 
電話番号:02-26791356
Facebookページ:立晶窯 (鶯歌陶瓷老街)

Teaday 喝茶天 
住所:新北市鶯歌区重慶街62-1号B1 
電話番号:02-26782782
Facebookページ:Teaday喝茶天-茶家食堂

 

編集:黄佩瑄
校閱:張惠萱

微笑台灣 (日文版)

小さな町にも物語があります。
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微笑台湾は台湾の様々な魅力を記事にしてお届けします。

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